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借出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 移動: ナビゲーション, 検索 賃貸借(ちんたいしゃく)とは、法律上の言葉で、当事者の一方が他方に対して物の使用収益を認め、その対価(賃料)を徴収することを内容とする契約をいう。

物の使用収益を認める(貸す)当事者を賃貸人(ちんたいにん、ちんがしにん)、物の使用収益を認められた(借りる)当事者を賃借人(ちんしゃくにん、ちんがりにん)という。賃借人が賃貸借契約に基づいて目的物を使用収益する権利を賃借権といい、賃貸人がある物を賃貸借契約の目的物とすることを「賃借権を設定する」という。日本の民法においては、第3編「債権」の第2章「契約」の第7節「賃貸借」(第601条から第621条まで)に規定がある。

目次 [非表示] 1 特別法などによる修正 2 成立 3 契約上の義務 3.1 賃貸人の義務 3.2 賃借人の義務 4 賃料の増減額 5 賃借権の対抗力 5.1 不動産賃借権の対抗力 5.2 動産賃借権の対抗力 6 転貸借、賃借権の譲渡 6.1 承諾のない場合 6.2 承諾がある転貸 6.3 承諾がある賃借権の譲渡 6.4 借地借家法による修正 7 賃借権の物権化 8 関連項目



日本の民法における賃貸借の規定は、賃貸借契約の対象として不動産と動産の両者を想定している。しかし、不動産の賃貸借のうち、建物所有を目的とする土地の賃貸借と、建物の賃貸借については、借主保護などの観点から民法上の原則に修正を施した借地借家法が適用される。民法上の規定には任意規定が少なからず存在し、民法の規定が任意規定であれば当事者間の契約が優先する。そのため動産の賃貸借契約においては当事者間において細かな契約条項が定められているのが通常であり(約款の項目を参照)、民法上の規定が直接適用される機会は少ない。よって実社会において賃貸借の規定が直接に適用される場面は少なくなってきたといえる。しかしあくまで原則は民法上に規定された賃貸借なのであり、これが基礎となっていることも確かである。


日本の民法は、賃貸借を意思表示の合致により成立する諾成契約として規定している。外国では契約の際に書面などを要求する要式契約として規定している場合もある。

日本では不動産を賃貸する際に、賃貸物(特に建物)の引渡しに先立って賃借人の債務、具体的には賃料の支払や後述する原状回復のための費用を担保する目的で一定額の金銭を賃貸人に寄託(消費寄託)させるのが通例である。この金銭を敷金(しききん)とか保証金(ほしょうきん)という。また、賃借人に賃貸借契約締結そのものの対価(謝礼)を支払わせることも多く、この対価を礼金(れいきん)という。契約が成立した際、敷金以外に支払われる金銭のことを総称して権利金ということもある。これらと類似したものとして、契約を更新する際に金銭の支払をすることが合意されていることもあり、更新料と呼ばれる。


賃貸借契約においては、賃貸人と賃借人の双方が、相手に対する義務を負う。したがって、賃貸借契約は有償の双務契約であるといえる。賃貸人の中心的な義務は、賃借人に目的物を使用収益させること(及びそのために必要な措置をとること)であり、賃借人の中心的な義務は賃料の支払である。以下、個別に見ていく。


賃貸人は賃借人に対して賃貸借契約の目的物となっている物を使用収益させる義務を負っている。つまり、目的物の維持や管理は賃貸人の義務とされているのである。具体的には以下のような義務を負っている。

使用収益をさせる義務 賃貸人が賃借人に対して目的物を使用収益させる義務は、賃貸借契約の本質である。具体的には、賃貸人は賃借人が目的物を使用するに際してそれを妨害している第三者がいる場合にはこれを排除しなければならないというような形で現れる。 修繕義務(606条1項) 賃貸人には、目的物の使用収益に必要な修繕をする義務がある。例えば、賃貸している家が雨漏りするならばそれを修理するのは賃貸人の義務ということになる。なお、賃貸人が修繕しないことによって使用収益が不可能であるような場合には賃料を支払う必要はないとした裁判例がある。 費用償還義務(608条1項) 賃貸人は、賃借人が支出した必要費を直ちに償還しなければならないという費用償還義務を負っている。ここでいう必要費とは、目的物を使用収益できる状態を維持するために必要な費用のことをいう。前述した修繕義務を賃貸人が果たさない場合、賃借人が代わりに修繕を施してその費用を賃貸人に請求するということもこれによって認められることになる。 目的物の改良のために支出した費用は有益費と呼ばれ、契約の終了時に実費か改良による価値の増加額を賃貸人が償還しなければならない。もしも賃貸人がこれらの費用を償還しない場合、賃借人は留置権を行使して建物の明渡しを拒絶できる。 これらに加えて、賃貸借契約は有償契約であるから、559条にある瑕疵担保責任の規定が準用される。よって賃貸人はこれによる担保責任を負う場合がある。


賃借人は、契約の規定に従って目的物を使用収益する権利を有し、これに対して賃料を支払う義務がある。

また、賃借人は契約終了時に目的物を原状回復して返還すべき義務を負う(第616条、597条1項、598条)。

原状回復とは、目的物を契約前の状態に戻すことである。通常の方法で使用収益していた場合以上に目的物が傷んでいたときには、それを修復し、あるいはその分の損害を賠償する義務として現れる(なお、敷金が交付されている場合は、賃貸人は敷金から相殺することができる)。

またこれとは逆に目的物が契約前よりも物理的に増加している場合も原状回復の問題である(これは不動産の賃貸借において特に問題となる)。まず賃借人が持ち込んだ家具のように取り外しが簡単な場合、これらは収去して原状回復する義務が生じる。次に賃借人が買ってきて貼り替えた壁紙や、賃借人自身が設置したエアコンなどの空調設備のようにそれを分離することが困難であったり経済的に大きな損失となる場合にはそれらの物は附合し、賃貸人の所有物となる。ただし前述した費用償還の問題が発生する。上記二つの場合のどちらともいえない場合には、賃借人が、収去するか費用償還請求権を行使するか選択することができる。


賃料は、賃貸借契約に基づき賃借人が賃貸人に支払う利用料である。この支払が賃借人の主たる義務であることは前述したが、賃料の設定、特に事後的な改定については古来紛争が生じやすい問題である。賃料の条件はあくまで賃貸借契約の内容に従うが、民法典にも若干の規定がある。

まず小作関係において、不可抗力によって賃料よりも少ない収穫しか挙げることができなかった場合には減額請求をすることができ、契約の解除も認められる(609条、第610条)。また賃借物が一部滅失した場合でそのことについて賃借人に過失がないならば滅失した割合に応じた賃料減額請求をすることができ、その滅失によって賃借した目的を達成できない場合には契約を解除することもできると規定されている(第611条)。賃料の支払時期も宅地、建物、動産は月末に、それ以外の土地については年末あるいは収穫期の後に後払いすることが民法典において定められている(614条)。しかし前述のように当事者の合意(契約)が優先するので先払いにしても問題はない。

なお、農地の賃料減額請求については農地法が、借地(建物所有を目的とする土地賃貸借)?借家(建物賃貸借)の賃料変更については借地借家法が特則を定めている。借地借家法は、地価や相場の変動に応じて賃料の増減請求権を貸主と借主の双方に与えている。また同法においては、賃料改定の紛争のうちでも小額の紛争についてはまず調停を行うべきとする制度も整備されている。


賃貸人が賃貸借の目的物を譲渡した場合、賃借人は(後述の対抗要件を有しない限り)新所有者に対して賃借権を対抗できない。したがって、新所有者が賃借権を承認しないときは、賃貸借契約は終了する。これがローマ法以来「売買は賃貸借を破る」の法格言によって表されてきた原則である。


ただし目的物が不動産である場合には、賃借権を登記することで新所有者に対しても賃借権の存在を主張し、継続して賃貸することができる(これを賃借権を新所有者に対して「対抗できる」という)。しかし賃借権が登記されている土地や建物には買い手がつかない場合もある。よって通常の貸主は賃借権の登記に対して消極的である。そして賃借人にはその登記を請求する権利がないという裁判例があり、学説の主流もこれに賛成したため、賃借権を登記することで新所有者に対抗することは事実上困難であった。

そこで建物の保護に関する法律や借地法、借家法によってもっと容易に賃借権を新所有者に対して対抗できるような制度が整備された。その後、これらの規定は借地借家法に吸収されている。

なお、賃借権を新所有者にも対抗できる場合、敷金返還債務も新所有者が引き継ぐとした裁判例がある。このため、このことを逆手にとって強制執行を妨害することが企てられる場合もある。つまり、所有している不動産について差押えを受けそうになった者が第三者と通謀して賃貸人にとって非常に不利な賃貸借契約を結んでしまう。具体的には極めて高額の敷金を差し入れ、極めて低額の賃料を設定し、長期間の賃貸借契約を締結したように仮装するのである。するとたとえ差押えがされてその不動産が競売に付されて落札されたとしても、もれなくその非常に不利な賃貸借契約が付随してくることになるため、その不動産の買受申出を躊躇させることが期待できるのである。もっとも、このような濫用的賃貸借は、民事執行法の改正や判例の努力等により現在では少なくなった。


動産を目的物とする賃借権はどのような場合に新所有者に対しても主張できるのか、民法上は明文を欠いている。その動産の引渡しを受けていれば、換言すればその動産を占有していれば目的物の所有者が代わったとしても新たな所有者に対して主張することができる。すなわち、引渡し(占有)を解釈上対抗要件とするのが多数説である。


賃借人が賃借している目的物を使用収益する必要がなくなった場合には、これをさらに他人へ賃借したり、あるいは賃借権そのものを他者へ譲渡することが考えられる。しかし乱暴で常識のない人物へ部屋が又貸しされたり、有能で勤勉な小作農から無能で怠惰な小作農へと土地の賃借権が譲渡されるのは賃貸人として見過ごすわけにはいかない。そこで、日本の民法においては、賃貸人の承諾を得ないでされた転貸や賃借権の譲渡は、賃貸人に対抗できない上、賃貸借契約の解除原因となっている(第612条)。もっとも、賃借権の譲渡を認めるイギリスのような国もあるし、日本でもギュスターヴ?エミール?ボアソナードが起草した旧民法では認められていた(旧民法は法典論争の結果、施行されなかった)。なお、地上権や永小作権などは経済的には賃借権と同様の働きをするものの物権であるため自由に譲渡することができる。

以下、転貸借?賃借権の譲渡が無断でされた場合と、賃貸(租地)人の承諾を得た場合に分けて説明する。


賃借人は、賃貸人の承諾がなければ目的物を転貸したり、賃借権を譲渡することはできない。承諾なしに行ったときは、賃貸人は契約を解除することができるというのは前述のとおりである(民法612条)。 

ただし、土地の無断転貸が賃貸人に対する背信行為と認めるに足りない特段の事情がある場合においては解除権は発生しないというのが判例である(最高裁昭和28年9月25日?民集7巻9号979頁)。これは無断譲渡(最高裁39年6月30日判決?民集18巻5号991頁)や借家権についても同様である。ここでいう特段の事情とは、例えば形式的に賃借人の名義が代わったけれども実質的に見れば賃借人に変更がない場合などが挙げられる。


賃貸人の承諾を得て行った転貸や賃借権の譲渡は、当然有効であるし、解除原因とならないことも当然である(民法612条1項参照)。

転貸の場合、転貸を受けた者(転借人)が賃貸人に対して直接義務を負うことになる(民法613条1項前段)。したがって、賃貸人は転借人から直接賃料を受け取ることもできる。

民法の一般原則からいえば、転借人が賃料支払義務を負うのは賃借人(転貸人)に対してであって、もとの賃貸人に対してではない。例えば、BがA所有の甲不動産を賃借し、これをCに転貸している場合には、AB間、BC間に賃貸借契約関係はあるがAC間には契約関係は存在しないから、CはBに対して賃料を支払う義務はあってもAに対して賃料を支払う義務はないということになるはずである。上記の民法の規定は、この原則に対する例外として理解することができる。

この例外は、あくまでも賃貸人の賃料確保のためであって、賃貸人に望外の利益を得させるためのものではないから、賃貸人が転借人に請求できる金額は、賃貸人が賃借人に対して有する賃料債権の額が限度となる。例えば、上記の例で、AがBに対して賃料月額20万円で甲不動産を賃貸し、BがCに賃料月額30万円で賃貸している場合、AがCに請求できる金額は20万円である。

なお、転借人が負担する転貸人と賃貸人に対する賃料支払義務は連帯債権の関係にあるといわれることがある。また、転借人は賃料を賃借人(転貸人)に前払いしている場合であっても賃貸人に対抗することができない(民法613条1項後段)。

転貸がされている場合、もとの賃貸借契約が解除されたときに転借人が影響を受けるかどうかが問題となる。判例によれば、(租地)賃貸人と賃借人がもとの賃貸借契約を合意解除した場合でも、特段の事情がない限り、転借人に合意解除の効力を対抗することはできず、転借人は引き続き目的物を使用収益することができる(最高裁昭和37年2月1日判決)。一方、賃貸人がもとの賃貸借契約を債務不履行によって解除した場合には、転借人は目的物を使用収益する権利を失うとされている(最高裁平成9年2月25日判決?民集51巻2号398頁)。もっとも、これらの判例には批判も強い。なぜなら、債務不履行に基づく解除原因がある場合であっても合意解除の体裁をとる場合もあるし、賃貸人(租地)と賃借人が通謀して債務不履行による解除を装えば転借人を容易に追い出すことができるからである。


賃借権が譲渡された場合、それまでの賃借人が契約関係から離脱して従来からの賃貸人と新たな賃借人の間に契約関係が移転する。ただし敷金の返還請求権は新たな賃借人(賃借権の譲受人)には移転しないと解されている。


借地借家法が適用される場合、転貸や賃貸借権の譲渡が比較的容易に認められる場合もある。すなわち、借地契約については、一定の場合、賃貸人の承諾がなくても裁判所の許可を得れば転貸や譲渡をすることができる(借地借家法19条、20条)。この規定(特に20条)では借地上の建物に抵当権が設定されている場合などが想定されている。つまり、抵当権が実行されて借地上の建物が競売にかけられ、買い受けられた場合、建物の所有権とともに土地の賃借権も「従たる権利」(従物の項目を参照)として買受人に移転する。しかしそれは賃借権(借地権)の無断譲渡にほかならず、借地契約の解除原因になってしまうのが原則である。これでは抵当権を設定することが事実上不可能となるため、このような規定が必要になる。


賃借権は地上権や永小作権と同様の経済的機能を果たすとはいえ、本来債権である。しかし建物の保護に関する法律、租地法、借家法、及びそれらを一本化した借地借家法によって、物権に類似した効力が与えられるようになった。これを賃借権の物権化という。具体的には、登記や居住(占有)(租地)、明認方法などの対抗要件を備えることで第三者に対しても賃借権を主張できるという効力を中心とする。従来、賃借人が借地上の不法占拠者などを排除しようとする場合、債権者代位権(423条)を流用して、賃貸人の所有権に基づく物権的妨害排除請求権を賃借人が代位行使するという法律構成がとられてきた。しかし、判例は、対抗力のある不動産賃借権については、賃借権の物権化を理由として、賃借権そのものに基づく妨害排除請求権を認めることとなった(最高裁昭和30年4月5日判決)。